ランバート・ベールの法則(Lambert-Beer law)とは

一様な吸収性媒質において入射光の強度と透過光の強度との間の関係を表す法則をいう.すなわち,入射光強度をI0,透過光強度をIとするとき,指数法則I=I0exp(-ad)のことをいう.ここに,dは吸収制媒質の厚さ,aは吸収係数である厳密には,これはランバートの法則と呼ぶべきである.ベールは,特に,光の吸収は吸収物質の分子の総数によって決まり,吸収媒質中の吸収物質の希釈度には無関係であることを指摘した.これをベールの法則という.これは,吸収が,吸収媒質に含まれる個々の吸収性分子によって引き起こされていると考えて,その分子の濃度と個々の分子の吸収断面積eによって決まると考えることに相当する.すなわち,a=ce(c:定数)としたとき,先の指数法則を,特に,ランバート・ベール則(L-B則)と呼ぶべきかもしれない.しかし一般には,これらをひっくるめて,そう呼んでいる.いずれにしても,吸収を起こす個々の吸収物質粒子が一定の吸収断面積を持つものとすれば,指数法則が成立するから,この法則は広い適用範囲を持つ.この考え方によれば,個々の粒子が散乱を伴う場合にも,それによって散乱された光の透過光検出面への混入が直接の透過光にくらべて無視できる限り,個々の粒子は吸収と同様の働きをするので,L-B則が成り立つ.ただし,散乱性が強いか,試料が厚い場合には,散乱光の検出面への混入が無視できなくなり,L-B則は成立しなくなる.散乱光の影響を避けるのに,検出面の視野を狭くしたり,あるいは,散乱光が個々の散乱過程によって遅延することを利用して時間的に散乱光を分離するなどの方法が試みられている.