熱光凝固 (thermal photocoagulation)とは

眼内に照射されたレーザー光はメラニンやヘモグロビン色素などに吸収されて熱を発生させ,タンパク凝固を生じる約60°Cに温度が上昇して組織が凝固される.糖尿病網膜症や綱膜静脈閉塞症に対する網膜光凝固や,加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管の直接光凝固のほか,緑内障に対する虹彩切開術などにも用いられ,眼科の日常診療で頻用されている.レーザー光源にはArイオン,Krイオン,色素レーザーなどの可視光源が主として用いられるが,近赤外波長も経強膜光凝固に用いられる.通常の網膜光凝固では,照射直径100~500 μm.照射時間0.1~0.2秒,日本人では出力100~300 mW程度が用いられるが,メラニン色素に之しい白人では高出力を要する.過剰凝固では出血や水分蒸発による組織破壊などの合併症をきたす.照射方法には,細隙灯顕微鏡とコンタクトレンズを組み合わせる方法が最も多いが,眼内プローブを用いた術中照射も盛んにおこなわれる.