物質のコヒーレンス(matter coherence)とは

微小な物質系では,その量子力学的な状態が散乱により大きくかき乱されることが少ない.したがって散乱による物質の単位幅が小さいだけでなく,波動関数の量子力学的な複素振幅が試料全体にわたってよく保たれる.これを指して物質が量子力学的にコヒーレントな状態にあるという.このような微小な物質に対する光学応答理論では,準位のサイズ量子化だけでなく,波動関数のミクロな空間構造を正しく反映する非局所的な取扱いが必要で,応答電磁場の中にこれと対応するミクロな空間構造成分が現れる.このようにして初めて試料のサイズや形状に依存した電磁応答を系統的に記述することが可能になる.物質のコヒーレンスの考察はメゾスコピック系の出現とともに本質的な重要性を持つようになった.