X線吸収微細構造(X-ray absorption fine structure:XAFS)とは

各元素には特有のイオン化エネルギーがあり,それより高いエネルギーのX線は吸収され,内殻電子が光電子として放出されるこの吸収過程により各元素のイオン化エネルギーに対応する特性吸収端が観測される吸収端付近のスペクトルはXANES(X-ray absorption near edge structure)と呼ばれ,吸収中心原子の電子構造や周囲の原子との結合対称性などの情報を与える.また,吸収により放出された光電子は,近隣の原子によって散乱され吸収原子へ反射され戻ってくることにより吸収原子の遷移モーメントに変調を与える.その結果,吸収スペクトルには特性吸収端から高エネノレギー側数百から1 keVにわたって微細構造(extended X-ray absorption fine structure:EXAFS)が生じる.この微細構造は近隣の元素の種類,中心元素との距離,配位数,結合性に関する情報を含む.したがって,これらXANESとEXAFSスペクトルを解析することにより,注目する物質中の元素の非常に微細な構造と電子状態に関する情報が得られる.さらにX線は物質に対する透過能に優れるため測定雰囲気を選ばないという特徴を有する.したがって,種々の気相中や溶液中などの材料が機能を発現する条件下にて分光測定することが可能となる.