近年,インターネットの爆発的普及によるデータトラフィックの急増に応え,アクセス系ではADSL(asymmetric digital subscriber line,非対称デジタル加入者線),CATV(cable television,ケーブルテレビ)インターネット,FTTH(fiber to the home)等による情報ネットワークの急激なブロードバンド化が進み,また光ファイバを用いた基幹系においても高速大容量実現に向けて波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)化や高速化が進んでいる.トラフィックの増加は留まるところを知らず増加しており,今後さらなるWDMの高密度化および高速化が進むと予想される.高速大容量通信の中核をなす光通信技術は,これらの新たなニーズに応えるべく,通信ネットワーク用デバイスの研究,開発,製造や通信システムの研究,開発,建設,運用,保守等の様々な分野に渡って進化を続けており,この進化を支えるキーテクノロジーの一つが光通信計測技術である.

ここでは,光通信計測技術の中から光通信インフラを支える,光ファイバの光伝送損失測定や光ファイバ接続点の損失測定等の光線路試験を行うためのOTDR(optical time domain reflectmeter:光パルス試験器)技術と,光デバイス等の光スペクトル特性評価のための光スペクトラムアナライザ技術と,時間領域での高速波形観測を行うための光サンプリング技術について説明する.

29・4・1 OTDR

OTDR(optical time domain reflectmeter)技術は,光パルスを光ファイバの片端から入射し,光ファイバ中の異なる箇所で発生する反射光や散乱による戻り光(後方散乱光)から,光ファイバの全長にわたる破断位置の特定やファイバの損失を測定する技術である.ここでは,最も一般的なOTDRである光損失分布測定用のOTDRと,超長距離光伝送路監視用に用いられるコヒーレントOTDR(C-OTDR)について説明する.

損失分布測定用のOTDRは,光ファイバ内を伝搬する光が屈折率の微少なゆらぎなどによって生じるレイリー散乱を利用しており,光ファイバの各位置から戻ってくる後方散乱光の伝搬時間をもとに距離を求め,また後方散乱光のパワーから長手方向の光ファイバ損失を求める光計測器である.

後方散乱光のパワーP(t)は,時間の関数として

式29・33

で表される1).ここで,P0は入射光のピークパワー[W],αは光ファイバの伝送損失[m-1],vgは群速度[m/s],tは光パルスが光ファイバに入射されてからの時間[s],Sは後方レイリー散乱係数,αsはレイリー散乱損失[m-1],Wは入射光のパルス幅[s]を示す.尚,後方レイリー散乱係数Sはレイリー散乱のうち後方レイリー散乱として発生する割合を示す.また,光ファイバ入射端からの距離Lと光パルスが光ファイバに入射されてからの時間tは,2L=vgtの関係を持つことから,各時間tにおける後方散乱光強度を検出することにより,光ファイバの長手方向の光損失分布を測定することができる.また,後方散乱光強度は極めて微弱なため後方散乱光強度信号のSNR(signal to noise ratio)改善が非常に重要となる.この改善には,光ファイバ線路を往復する時間よりも長い周期の繰り返し光パルスを送出し,受信した後方散乱光強度信号を加算平均することによって信号のSNRを改善する手法をとっている.

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