【出力が大きいほど安定度が高まる量子限界レーザー】

  量子限界では周波数雑音を低減するためには、レーザー光強度が高くなければなりません。実際、有限の光子数では、光子数が変化するときの振幅雑音は光子数が多いほど、量子限界が高まります。光検知器は光エネルギーを計測するので、振幅雑音が大きければ、制御可能な周波数限界も劣化するからです。出力が大きいほど、安定度が高まるのが量子限界レーザーというものなのです。量子限界レーザーの特性を明確に示すデータを図に示しました。

  レーザー周波数の安定度を非制御状態と制御した状態を比較しました。何も制御しないと周波数雑音は低周波ほど大きい1/f雑音となっていますが、制御すると、低周波雑音は抑制される結果、6桁以上も雑音成分は減少して図のようになります。そのときの低周波雑音の限界は光強度に関係するショット雑音限界に達しています。この1.5x10-19 /Hz1/2というショット雑音は47mWという受光パワーの量子限界です。このときの受光システムは図中左に示したとおり、8個のフォトダイオードを並列し、その検出信号を合算させたものです。光信号電流の加算はコヒーレントな加算となって、そのショット雑音は電流量の1/2乗に反比例して減少しました。実際、一個のフォトダイオードの最大入力光量は12.5mWなので1個のフォトダイオードではこの安定度を得ることは原理的にできません。このシステムでは最大100mWまでの周波数安定度が可能だが、重力波アンテナが要求する10-21の安定度を実現するには、出力がさらに100倍の2乗、すなわち1万倍以上が必要となり、レーザー出力1kWが最低限の要求となる。量子限界は掛け値なしの要求で、まず1kWの単一縦横モードを量子限界まで制御することが求められるのです。

  その後、重力波アンテナの主干渉計におけるパワーリサイクリング技術の研究が発展して、共振器内の循環パワーが1kWになれば良いことが判明し、安定化レーザーへの出力要求は10Wレベルに緩和されました。

1 N. Uehara, K. Ueda, 193 mHz Beat Linewidth of Frequency Stabilized Laser-Diode-Pumped Nd,YAG lasers, Opt. Lett., vol.18, 505-507 (1993).

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