ファイバーディスクレーザーの開発

 1990年代半ばLD励起固体レーザーの産業応用が重要な課題となり、我が国でも国家プロジェクト「フォトンテクノロジー・プロジェクト」が立ち上がった。ちょうどファイバーレーザーの研究を開始していた私はそれに参加し、HOYA、浜松ホトニクスと共同して新しい概念の産業用ファイバーレーザーの開発に取り組んだ。技術開発は両者にお願いをして、私自身は基礎的な概念や背景物理の確立に集中した。その経緯を簡単に紹介する。それらの結果は1998年になるべく目立たぬようにLaser Physicsで出版した。欧米ジャーナルに出すにはあまりに重要で、注目を浴びたくなかったからだ。概念的には今も重要だと考えている。

ファイバーディスクレーザーの開発

 フォトンプロジェクト「産業用高出力レーザー開発」を立ち上げるに当り、その先導研究として、レーザー加工の将来像に関する産業界の要求を調査するために、1995年12月に高崎合宿を行なった。先導研究が認められたということは、フォトンプロジェクトが国家プロジェクトとして予算化されることが確実になったことを意味するので、レーザー加工のユーザー企業もレーザー開発関係の企業もそれまでの研究会とは目の色が変わって、本気の提案をする機会となった。そこでこの高崎合宿では、1企業の発表は、発表10分、質疑応答20分として、とことん、目指すところを明らかにすることにした。ライバルが一堂に会する合宿討論会として、産業界の要求は全部出してもらった。最終的結果をまとめた図を参考までに示した。産業界の方々、中でもレーザー加工をしているレーザーのユーザーと議論をしたところ、結局、応用技術者が要求しているのは”ファイバーから出てくるレーザー光”であって、レーザー装置そのものはいくらコンパクトにしても要らない、ということであった。典型的な意見は、クリーンルームの空間はきわめて高価になるので、たとえレーザー装置がタダであっても、クリーンルーム内にレーザー装置を配置するのはコスト的に許容できない、というものであった。結局、植田が合宿討論の結果をまとめたところでは、図のようにレーザー加工現場にはファイバーで光主力レーザー光が供給されるべきで、レーザー光の発生は加工現場から離れた場所で行なわれる必要がある。そして、それは必要に応じて出力を自由に増強可能なものでなくてはならない、というのが産業界の要求であった。それまでLD励起固体レーザーで10 kWの高出力を発生すればそれを使って加工すれば良いと考えていたレーザー開発会社の考えは根本的に間違っていたことになる。

ファイバーディスクレーザーの開発

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