まとめ
高出力ファイバーレーザーの歴史と展望といいながら、筆者自身の研究展開を中心に述べてきました。個別に述べてきたように、このファイバーレーザーの研究は決してはじめから戦略的にプログラムを作って進んできたものではありません。ある意味で行き当たりばったり、ハプニングの連続として発展してきたものです。しかし、こうして振り返ってみると、ずいぶん調子がよく、よく準備されて研究が進んできたように見えます。それは科学や物理、技術そのものの中にある論理性が表面化したものです。特に意識しなくても素直に研究対象が求めるところを解明し、それに対処していけば、十分計画を練った研究のように見えるものです。むしろ、まだ理解もできない問題に、先に計画を作って研究をしようとすると、出来上がったときには、むしろ時代遅れになっていることも多いでしょう。柔軟な態度で、自分を変えていく姿勢が大事です。
皆さんに伝えたいことは、結果から判断するな、ということです。世の中は結果が良いものは、その考え方も良いと考えがちです。しかし、これは自分では研究をしない素人の見方です。結果から判断していては、それより良い結果を得ることができません。良い結果が出ているかどうかにかかわらず、その研究を貫いている考え方、アイデアの根拠、価値観を学ぶことで、その著者が見過ごしている将来を発見し、更に新しいアイデアを生むことができます。ただ感心しては、自分のやることは見つかりません。成功した研究者が発表しない失敗を学んでこそ、乗り越えることができるのです。
できないといわずにやってみろ、という晝馬輝夫会長の言葉の重みを感じます。(これは浜松ホトニクス内のサイエンスを読む会で講演をしたときのまとめです。) 同時に、思い出すのは、上智大学の時にお世話になった押田勇夫先生が「物理学の方法」の冒頭に、物理学で最も有効な方法は試行錯誤法である、と言ってのけた言葉も思い出します。その通りです。新しいこと、人類未知のことに挑戦するときに、決まった方法などあるはずもありません。勇気を持って試行錯誤することが重要で、試行錯誤の中で間違いを犯すから新しい発見に到達できるのです。寺田寅彦が先の見える秀才は研究者には向かないと明治の東大で宣言していたことも重い言葉ではないでしょうか
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