コヒーレントアレイとパルス圧縮

 超高出力レーザーを用いて真空から物質生成に至る高エネルギー物理学を展開しようという野心的な研究が欧州で進んでいる。その中で、G. Mourouが進めているのが、図のようなファイバーレーザーアレイによる超短パルスレーザーである。当初の計画は、1本のファイバーレーザー出力を3段分割、100万本のファイバー増幅器を使ってジュール級のフェムト秒パルスを発生しようという。将来の応用は超高出力だけでなく、高繰り返し、高平均パワーが必要なので、ファイバーレーザーを候補に上げた。ICAN計画の中ではThales社がコヒーレント加算を担当しており、非常に優れた位相計測技術と高速フィー ドバックで多ビーム結合の研究をしている。もちろん、問題はたくさんあるが、欧州の良いところはこのように誰が見ても困難な研究の場合、つまらない技術的欠点を突いて、足を引っ張るような議論がないことだ。下手に足を引っ張った場合、将来、問題が解決したり、さらに研究が発展したときに、彼は将来を見る目がない、という烙印を押されることが科学者、研究者にとって致命傷になることを知っているからである。そんなことは誰でもわかっている、文句をいうくらいなら解決策を提示しろ、という雰囲気が欧州らしさを感じさせる。

 ICANにおけるコヒーレント加算の方式を図にすると以下のようになる。各々のファイバー増幅器は同じ周波数のpsからnsパルスを増幅し、それらのパルスを合成した後、通常の固体レーザーと同様、大型回折格子によるパルス圧縮過程を通して、超短パルス化される。CPAを開発したMourouはこの過程を避けることができないのかもしれない。しかし、この方式のボトルネックは超大型の回折格子が必要なことである。誘電体コート型の回折格子を開発しても、回折格子の損傷しきい値は通常のミラーに比べて大幅に低いことは避けられない。これは表面の微細構造のエッジに電解集中が避けられないという電磁気学的な限界に起因するので、技術的な改善だけでは解決が難しい。

コヒーレントアレイとパルス圧縮

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