レーザー発振器と多ビーム出力レーザーはどう違う
同じシンポジウムで多ビーム出力レーザーの意味を考察した。通常のレーザーは2枚のミラーの間を往復しながら、出力鏡から内部のレーザーパワーの一部を外部に出力し、反射光を再度、増幅媒質に戻し、反対側の全反射鏡を使って2パス増幅しながら、出力パワーを補充している。それを時間軸で展開したものが図中右である。一方、最初の出力ビームの一部を空間的に離れた別の増幅媒質で増幅して、またその一部を別の増幅器に入射、増幅すれば、増幅で獲得したパワーを外部に出力しながら、系全体としては定常状態を形成することができる。左端に全反射鏡をおいて、2パス増幅にすれば、レーザー発振器とまったく同じだということが理解できるだろう。右の場合はレーザー光の往復は時間と空間軸が同時に変化している。
右と左の違いは左のレーザー発振器の場合は、時間的には異なるレーザー出力が実際は1本のビームとして出力される点にある。これはレーザーの共振器において、光が往復しても、周波数、波長、位相、そして偏光、空間波面が変化せず、完全なコヒーレンスが維持されることによる。つまり、共振器内を往復しながら部分的なパワーを外界に接合させているレーザー共振器においては、完全なコヒーレント加算がされている。何も調整しなくても完全なコヒーレント結合ができているために、まったく意識していないが、これは原子が発生する誘導放出光が完全なコヒーレント合成される事実と合わせて、驚くべきレーザーの性質である。
多ビーム出力レーザーの場合も、その周波数、波長、偏光状態はまったく同じだが、” マクロな別の増幅媒質”で増幅されたために位相と空間波面に関しては出力ビーム毎に同一ではなく、同位相に調整しなければ、完全なコヒーレント加算はできない。そこで同じレーザー光の性質を維持しながら並列増幅する方式を考えると、図のように単一モードファイバーをファイバー結合器で分岐しながら増幅すれば、その並列出力は位相は異なるもののコヒーレント加算可能なレーザービームとして増幅される。それを集積回路的に書いてみれば、シードLDを分岐しながら増幅し、2次元LDアレイとして出力するデバイスが考えられる。これらに液晶パネルのような位相制御素子を付け加えれば、コヒーレントファイバーアレイやLDアレイとなるかも知れない。将来像を描いて、コヒーレント加算の研究を始めた。
無料ユーザー登録
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
- @optipedia.info ドメインより登録の手続きを行うためのメールをお送りします。受信拒否設定をされている場合は、あらかじめ解除をお願いします。
- Gmailをお使いの方でメールが届かない場合は、Google Drive、Gmail、Googleフォトで保存容量が上限に達しているとメールの受信ができなくなります。空き容量をご確認ください。