その後のファイバーディスクレーザー
フォトンテクノロジー国家プロジェクトは無事終了した。驚いたことに、日本の国家プロジェクトでは、開発プロジェクトに成功すると、開発した設備は参加企業が買い取って事業化することが義務づけられているようだ。一方、うまくいかなかったプロジェクトは事業化できないのだから、設備を買い取る必要はない。成功すると、せっかく受け取った研究補助金を返金しないといけないのだから、普通に考えると、失敗報告をする方が儲かる。しかし、植田が基盤技術研究促進の評価委員として経験したところでは、日本の企業は必ずプロジェクトの成功報告をする。ファイバーディスクレーザーの研究そのものは間違いなく成功例だったので、HOYAのファイバー製造装置一式や浜松ホトニクスの高出力半導体レーザー開発装置の去就が問題となった。どちらか一方だけでは、企業としての事業化にはつながらないからだ。どちらも実際はNEDOの補助金の数倍の予算を使い、専任の研究員を雇用して研究を進めてきた。どうなることかとみていたが、結局は浜松ホトニクスがHOYAの研究設備を浜松の研究所に移管して、HOYAのファイバーレーザーグループの研究員毎、引き受けることになった。そして浜松ホトニクスの社内プロジェクトとしてファイバーレーザー研究は継続されることになった。
浜松ホトニクスに移ったファイバーディスクレーザーは当然、Yb添加ファイバーレー ザーに改良され、図にあるように1枚のディスクで>750 Wを出力するようになり、さらに 改良されて右図にあるようにコンパクトな外径から1.5 kWを発生する高出力加工用レーザーとして商品化された。日経産業新聞から日経BP技術賞を受賞するなど注目を浴びた。同年に受賞したのは、プログラム言語Rubyの開発、本田のディーゼルエンジン用NOx急増還元触媒、京大山中教授のiPS細胞技術、東日本大震災で東北新幹線の脱線を防いだ緊急地震速報システムなど重要なものばかりであった。
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