ファイバー線引き技術

 プリフォームが完成すれば、ファイバー線引き機でファイバーを用意しなければいけない。光ファイバーが0.2 dB/kmという理論限界の低損失に達するには、単に不純物を減少させ、残留吸収を極限までなくしただけではいかない。最後はガラス分子のレーリー散乱との戦いとなる。

ファイバー線引き技術

レーリー散乱を極限まで減少させるには、ランダムに並んでいるガラス分子 の並びも揃わせてやるくらいの技術が必要になり、それにはファイバー線引き速度を高速化する必要があった。日本のファイバーメーカーのほぼすべてが電線メーカー出身であることは、単に応用が通信で共通だというだけではない。ファイバーの高速線引きには、電線線引きの経験が大いに生きたのであった。もっとも皮肉なことに、銅線の場合はいくら高速で線引きしても、電気伝導度が変化することはないが。
 ファイバー線引き機の原理を右図に示した。上からプリフォームを保持しながら、それを高温炉で熱し、溶けたガラスをした高速(最大100 m/s)で線引きし、その後、保護用のポリマーコーティングを行なった後、紫外線照射で降下させます。これらの線引きは巻き取り機に巻き取られますが、その間にある掃引速度は張力制御システムでファイバー張力を制御します。フォトニック結晶ファイバーの場合は、図右②のように細い石英菅を束ねてプリフォームとし、それらを引っ張りながら溶融させることになります。

ファイバー線引き技術

 ファイバー線引き過程には断面形状保存則が成立し、プリフォームに形成されたマクロな断面形状がそのままの形で捕捉引き延ばされたファイバーのミクロな断面にコピーされると考えられています。もちろん、この点が 同じミクロ構造を利用するといっても、半導体技術のようなリソグラフィー技術とは異なります。この段名形状保存則を成立させているのは、流体における連続の式、です。これは流体の質量流量は流線上のどこでも一定という流体力学上の法則であり、溶融ガラスは非圧縮性の液体であるため、連続の式が成立します。ミクロに見た場合、断面状の任意の場所における局所的張力がバランスしている状態で線引きがなされれば、全体の断面積が徐々に縮小した場合も、断面形状は保存するということです。同軸対称系では円形断面構造は保存されやすいことも理解できるでしょう。

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