Nd添加ファイバーレーザーのプリフォーム製作

 ファイバーレーザーを作成する技術を開発するところから始める必要があった。日本はファイバー技術では世界のトップであった。ただし、無添加石英ファイバーである光通信用ファイバーの製造技術と、希土類添加ファイバーレーザー用ファイバー製造技術はまったく異なっており、自動的に優れたファイバーレーザーが開発できるわけではない。植田は2014年にOptical Valleyとして有名な武漢を訪れ、中国最大のファイバーレーザーメーカーを見学したことがある。IPGに対抗できる10 kWファイバーレーザーの開発に成功していたが、内実を聞くと、Yb添加ファイバーレーザーそのものは米国Nufernからの輸入に頼っており、光通信用ファイバーは国産化した中国でも、希土類添加ファイバーは満足な性能のファイバーは開発されていなかった。その上、Nufernは良い品質のものは欧米に提供し、中国に提供するものは、性能的に明らかに劣るのが現実だと告げた。性能が劣る部品を用いながら、対等以上の高出力レーザーを開発している中国メーカーの実力は侮れない、と感じたものだ。実際、同様の経験は戦後、欧米に追いつこうと努力してきた 日本で育った植田には、自分たちの過去を見るのと同じ感じだった。そして、不利な条件を克服する努力から、Japan as No.1といわれる時代は生み出された。同じことをやっていると感じた。

Nd添加ファイバーレーザーのプリフォーム製作

 その上で、我々のグループ(電通大、HOYA、浜松ホトニクス)のグループがどのようにしてファイバーレーザーのプリフォーム作りをしたかを紹介しよう。通常、ファイバーレーザーのプリフォーム作りは石英菅の内側からMOCVD(内付気相堆積)でスートを形成し、そこに溶液ディッピングでNd添加をさせてプリフォームを作成していた。気泡のないスートを作る技術は難しく、いろいろ苦労をした。さらに当時の国家プロジェクトの要求はコア径50ミクロンで1 kWの出力を目指すものだったので、単一モードファイバーレーザーよりはるかにスートを形成しなくてはならず、HOYAは苦労をした。それらを解決するために、図に示したようなMOCVDで薄い スートを作るたびに、スプレーノズルでNd溶液を添加するスプレー添加法を開発した。これはHOYAが独自に開発した技術だが、植田がロシアGPIのFiber Optical CenterにおけるGolantのPlasma CVD法による多層CVD技術でフレネル解説構造を作っていることを紹介したことも役立ったと思う。
 ともあれ低損失でNdを添加する技術を開発した結果を図に示した。高出力ファイバーレーザーではなるべく吸収係数を上げるために高濃度添加を目指したいが、Ndのイオン濃度が高まるということは重い原子がガラスに入ることなので、必然的に損失は増加せざるを得ない。

Nd添加ファイバーレーザーのプリフォーム製作

実際、青丸で示したPoやZellmer、Tunnermannが開発したファイバーレーザーやA.Liu(植田グループ)などそれまでのファイバーレーザーはそのほとんどすべてがMOCVD法で作成されており、その損 失係数もかなりばらついていた。HOYAのスプレー法(赤丸データ)で50ミクロンコアで濃度依存性を取ったところ、損失係数が濃度に比例する関係が取れたので、この段階で太いコアを形成した場合にも、微小空孔等の技術的問題による無駄な損失がないことを確認して、プリフォーム作成技術が一応完成したとした。

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