初期の原理実証実験8の字レーザーから円環レーザーへ

初期の原理実証実験8の字レーザーから円環レーザーへ

 初めて行った自由形状実験は8の字型ファイバーレーザーである。糸であるファイバーを折れないように8の字に束ね、その束ねられた部分にオイルを含浸させて、側面からLDで励起した。まさに学生実験であるが、容易に発振するファイバーレーザーはこれでも問題なく発振した。簡単ではあるが、これはファイバーレーザーにとってはじめての側面励起である。Snitzerがファイバーレーザーの側面励起は吸収率が低すぎるので可能性がないとコメントしたが、両端は4%以下の反射率しかないフレネル反射のみでも簡単に側面励起でレーザー発振することが証明された。たくさんのファイバーを束ねれば、吸収効率の問題は解決できる。

初期の原理実証実験8の字レーザーから円環レーザーへ

 次に取り組んだのは右図のようにファイバーレーザーを太い棒の回りに乱雑に巻き付けて、その回りを接着剤で固めてみた。大きく見れば円筒型といえる。接着剤は一応透明なので、LDバーで照射してやると、図に見るようにファイバーの端面からレーザー発振し、ファイバー出力端では黄色のアップコンバージョン光が観測された。また強力な近赤外線励起が接着剤層に閉じこもって円周方向に循環励起している様子が、CCDカメラでは赤色発光としてみられた。これによって、いい加減に作った接着剤層が励起光を閉じ込め、循環励起子ながらコアで吸収され、Nd添加コアから強力なレーザー光として発振していることが実証された。ファイバーを埋め込んだ固体レーザーとしての初めての原理実証実験である。これらの初期のファイバーはHOYAが核融合ガラスレーザーで技術を保有していたリン酸ガラスを使ってファイバーを製作した。ファイバー技術はリン酸ガラスから徐々に高温線引きが必要となる石英ファイバーに移行した。技術開発は一足飛びには成功しない。自分たちが保有している技術から一歩一歩、原理実証実験を積み重ねる必要がある。
 なお、現在のファイバーレーザーはすべてYb添加ファイバーレーザーとなっている。もちろん、Ndに比べてYbの方が量子欠損が少ないので、高効率化できるのでYb添加に移動するのは当然に思えるだろう。しかし、それが可能なったのは20世紀の終わり、つまり1997年くらいから808 nm LDより優れた結晶特性、熱特性を持つYb励起用の940 nm InGaAs/GaAs系LDの高出力化が進んだことで、固体レーザーを含めてNd系からYb系に移動した。それまで準3準位構造であるYbの問題は半導体レーザー技術の進歩による高密度励起によって解消したからである。しかるに、国家プロジェクトであるフォトンテクノロジーは最初に決定されたNd添加固体レーザーで、かつレーザー加工業界の要求から、Working Distanceが長く取れるマルチモードビームで、集光系50ミクロンという制約が付けられていた。これは2002年に世界ではじめて1 kW出力に成功したと発表したときに、世界からなぜそのような制約が必要なのか?と問われる結果となった。

無料ユーザー登録

続きを読むにはユーザー登録が必要です。
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
ログインパスワードをメールにてお送りします。 間違ったメールアドレスで登録された場合は、改めてご登録していただくかお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目