連続発振ガラスレーザーとGraded Index Fiber Laser

 日本のファイバーレーザー研究について触れてみよう。1960年代のレーザー研究では、液体窒素冷却したルビーレーザーを回転楕円型のランプ空洞で連続発振させて程度で、固 体レーザーの連続発振は極めて困難であった。中でも不均一広がりを持つガラスレーザーの連続発振は極めて困難とされていた。その時代にNECはGraded Index型のガラスレーザー、SELFOCレーザーを用いて、ガラスレーザーの連続発振に成功した。SELFOCレーザーは図に見る通り、Kイオン置換によって径方向屈折率分布を作り出し、コア径300μm、クラッド径1.5mm の構造を持った長さ136mmのガラスレーザーである。これをKrアークランプで励起して連続発振に成功した。この構造は、今でいうGraded index fiber laserそのもので、導波路特性によるモード制御性が高いことで、連続発振を可能にしたといえる。同様に、2中クラッド構造ファイバーレーザーも東北大の川上等によって最初に報告されたが、その目的はファイバーの分散特性の制御のためで、励起用クラッ ド構造にはつながらなかった。やはり、現在の高出力ファイバーレーザーのイメージが生み出されるには、LDが現実のものになるのを待つしかなかったといえる。存在しないものを創造してあるべき姿を描くことはできない。同時に、当時の研究開発は光通信を目的 としたために、ファイバーレーザーの高出力特性は想像外であった。選択と集中は時とし て重要な本質を捉え損なうことがある。