二光子励起蛍光顕微鏡は、近赤外の超短パルスレーザー光を使い、生体内部(数百μmの深部まで)の蛍光強度(蛍光分子の濃度)分布を三次元的に画像化する装置である。

 

原理と特徴

非線形光学効果を利用した顕微鏡では、第二高調波顕微鏡、コヒーレント反ストークス・ラマン散乱(CARS)顕微鏡があるが、二光子励起蛍光顕微鏡は、観測できる対象が多いことと、超短パルスレーザーの登場により、最も普及した。

二光子励起蛍光顕微鏡では、超短パルスレーザーのパルス光を対物レンズを通して試料中の一点に集光する。その集光点からの蛍光強度を測定する。集光点の場所を変えてそれぞれの場所の蛍光強度が計測すると、蛍光強度(蛍光分子の濃度)分布が得られる。

一般的な二光子励起蛍光顕微鏡の光学系を図1に示す。レーザー光は、ビーム走査の光学系を通り、対物レンズで試料中に集光される。試料の蛍光は同じ経路を戻り、途中のダイクロックミラーで光検出器に導かれる。二光子励起蛍光顕微鏡は、三次元の空間分解能が得られる。共焦点顕微鏡と同じようにピンホールを設置することで、奥行き方向と深さ方向の空間分解能を2倍程度向上できるが、試料深部の蛍光を十分な強度で計測できないおそれがある。

通常の共焦点顕微鏡(一光子吸収)では観察深さの限界は数十μmといわれているが、二光子励起では数百μmの深部の観察が可能である。二光子励起蛍光顕微鏡は、生体組織の観察に優れており、多くの成果が報告されている[1]。特に生体組織深部の観察で利用されており、腎臓組織[2]、皮膚組織[3]、リンパ組織[4]、心筋組織[5,6]の観測例が報告されている。

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