LD 励起超短波パルスレーザーとして、大きな可能性を秘めているYb 系レーザー媒質の特性の比較を行い、Yb:YAG 結晶の長所を明らかにする。LD励起高出力超短パルスレーザーにおいて、レーザー媒質には以下の特性が求められる。

  1. 蛍光寿命が長い
    →増幅パルス間隔時に反転分布を多く蓄えることができる。
  2. 熱伝導率が高い、また熱膨張係数が低く、屈折率の熱変化が少ない。
    →高出力レーザーにとって非常に有利。再吸収損失があるYb 系レーザーにとっては、冷却が大変重要であり、熱伝導率は高い必要がある。
  3. 複屈折、熱複屈折効果が小さい
    →Ybレーザー媒質の高効率レーザー発振法である高強度励起では、熱レンズ効果などの熱歪が強くなってしまうため、熱歪が出にくいレーザー媒質が必要となる。よって、レーザー応用においてレーザー光の直線偏光性は小さいことが望ましい。
  4. 蛍光スペクトル幅が広い
    →超短パルス化には縦モードが多くレーザー発振する必要があり、そのためにレーザー媒質の蛍光スペクトル幅が広い必要がある。
  5. 高濃度イオン添加が可能

Yb系レーザー媒質の特性表

Yb系レーザー媒質におけるこれらの特性を表1 にまとめた。また、表1 には現在までの超短パルスレーザー発振器における実証特性についても示した。

表1:Yb系レーザー媒質の比較
Yb系
母材媒質
誘導放出
断面積
[10-20cm2]
蛍光寿命
[ms]
熱伝導率
[W/mK]
蛍光
スペクトル幅
[nm]
フーリエ変換
限界パルス幅
[fs]
実験例
パルス幅
[fs]
平均出力
[W]
YAG 2 0.95 11 9 120 340 0.11
136 0.003
730 16
810 60
KYW 3 0.7 3.3 24 50 71 0.12
KGW 3 0.7 3.3 25 47 112 0.2
176 1.1
glass 0.63 2 35 33 36 0.065
GdCOB 0.35 2.7 2.1 44 27 89 0.04
BOYS 0.2 2.5 1.8 60 19 69 0.08
86 0.3
YVO4 1.2 61 0.054
CaCdAlO4 0.55 6.9 47 0.038

近年、Yb 系レーザー媒質は注目されており、このように多くのレーザー媒質が開発研究されている。その中で、Yb:KYWとYb:KGW 結晶の研究が盛んである。これらのレーザー媒質は、誘導放出断面積が大きいことと、100 fs より短い超短パルスの発生が可能なことで注目されている。また、Yb:KYW 結晶においては、レーザーイオンのYb と母材結晶のY が完全置換されたKYbW 結晶などの高濃度イオン添加結晶などが報告されている。しかし、これらのレーザー結晶は2 軸性結晶であり、複屈折効果がある。更に、熱伝導率がYb:YAG より低く、結晶自体も堅牢でないという欠点もある。

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