レーザーの基礎をゼロから解説
気体レーザー(gas laser)は気体分子をレーザー媒質として用いたものであり、一般的な励起方法は気体を封入したガラス管 (あるいはセラミック管) への放電である。 放電によって加速された電子は気体レーザー媒質中の原子 (または、イオンや分子) にエネルギーを与え、原子を励起準位にし、反転分布を形成する。

図1 : 気体レーザーの概念図.(a)縦放電方式,(b)横放電方式
図1に最も基本的な気体レーザーの概念図を示す。図1(a) の横放電方式は連続発振に必要な安定放電のために低ガス圧で用いられる(低ガス圧の方が放電が安定する)。一方、図1(b) の横放電方式は、ガス(媒質) に高速で大量のエネルギーを与えることができ、更に高ガス圧で動作させることが可能なので、高出力パルス動作に適している(気体レーザーではレーザー媒質の密度を高くすることで高出力化が可能)。図1では全反射ミラーと出力ミラーがガラス管の両端に接着されている状態の共振器構成であるが、ガラス管にブリュースター窓を取り付け、ミラーをガラス管の外に配置する外部ミラー方式もある。この方式を使うと気体レーザーでも直線偏光のレーザービームを得ることができる。
レーザー媒質となる気体の種類には、原子ガス(HeNe レーザー、希ガスイオンレーザー、金属蒸気レーザー)、エキシマ、分子ガス(窒素レーザー、炭酸ガスレーザー) がある。
ヘリウムネオンレーザーの媒質はHeとNeの混合ガスである。1960年にBell研究所のJavan、Bennet及びHerriottの三人により開発された当時の発振波長は1152nmだったが、1962年にWhiteとRigdenにより633nmの赤色発振への遷移が達成されてからはこの波長が最も一般的である。他の発振線にはグリーン(543.5nm)、イエロー(594.1nm)、オレンジ(612.0nm)、1523nm、3391nmがある。レーザービームはガウス分布に近く、波長が非常に安定していることから、干渉計計測、レーザー顕微鏡などに用いられている。
希ガスイオンレーザーの媒質は、放電によってイオン化されたアルゴンイオン(Ar+)やクリプトンイオン(Kr+)である。Arイオンレーザーの代表的な発振線はブルー(488.0nm)とグリーン(514.5nm)、Krイオンレーザーの代表的な発振線はレッド( 647.1と676.4nm )、ArとKrの混合気体は450~670nmである。希ガスイオンレーザーは比較的高出力で、レーザーショー、レーザーディスプレーなどのエンターテインメントや加工、研究に用いられる。
エキシマレーザーとは電子励起状態の原子または多原子と、基底状態の原子または多原子が強く結合した分子であるエキシマ(Excited Dimer を略してExcimer)を発振媒質とするレーザーのことである。エキシマは高圧(最大4 気圧程度)の希ガスとハロゲンの混合気体に放電励起することで得られる。発振波長は希ガスとハロゲンの組み合わせで変化し、現在普及しているKrFエキシマレーザーでは248 nm、ArF エキシマレーザーでは193 nm の光を得ることができる。
エキシマレーザーは利得が高く、共振器を数回往復しただけで出力光として出射されるため、レーザー光としての品質は高くなく基本的にマルチモードである。ただし、干渉性が低いのでスペックルの発生がほとんど無視できる。このため、フライアイレンズによるホモジナイズド光学系を用いて広い領域を均一に照射するのが一般的な使い方である。数100 Wクラスのものは液晶パネル用TFT を作成するためのレーザーアニール装置や、半導体露光装置の光源として盛んに利用されている。
炭酸ガスレーザーは1964年にベル研究所のKumar Patel により開発された気体レーザーで、金属、非金属の切断、穴あけ、溶接、表面改質などの加工用レーザーとして産業界に広く普及している。媒質は炭酸ガス、ヘリウム、窒素の混合ガスで、放電により励起される。加工用のレーザーとしては数10 kW のレーザー装置が稼働しており、200 W 程度の出力までは封じ切りで動作するRF 励起方式が広く採用されている。このレーザーは炭酸ガス分子の振動順位間で発振し、10.6 μm および9.6 μm を中心とした遠赤外の波長を持っている。10 μm付近の波長は水やガラスといった可視域で透明な材料に対しても非常に大きな吸収係数を持っており、紙、木材など金属以外の加工にも盛んに用いられている。また歯科用や美容用(ほくろなどの除去)の医療用レーザーとしても用いられている。