量子暗号(quantum cryptography)とは

量子力学の性質を利用した暗号通信法.広義には,認証,署名などを含めた広い用途を目指したものも含むが,狭義には,量子鍵配送と呼ばれる秘密通信法を指す.送信者と受信者は,量子状態(たとえば1光子レベルの微弱な光パルス)を送信するための量子チャンネルと,盗聴者に改竄されないことが保証された公開チャンネルを用いて通信する.送信者は,秘密鍵と呼ばれるランダムなビット列を生成し,そのビット情報を量子状態に載せて送る.受信者は送られた量子状態を測定し,ビット値を得る量子力学の原理により,盗聴行為はビットエラーの増加を引き起こすので,公開チャンネル上での話し合いにより,エラー率を見積もれば,盗聴の程度がわかる.それに応じて,ビットの破棄や圧縮をおこなうことにより,最終的に,他者には漏れていない秘密鍵を共有できる.この秘密鍵を使えば,秘密鍵と同じ長さまでの通信文を無条例に安全に送信することができる.