レーザー注入(laser implantation)とは

レーザー照射により物質表に分子,原子,イオンなどが注入される現象.固体表面に高強度のレーザーパルスを照射すると,レーザーアブレーションと呼ばれる物質表面の爆発的なエッチングが起こるこのとき表面から飛散する物質を別の表面に付着させる手法は,アブレーション転写(ablation transfer)と呼ばれている.これに対して,アブレーションのしきい値以下の強度のレーザーを照射したときにも,物質表面は過渡的に高温になり分子などの放出が起こることがある.このような現象は高分子フィルムに分散させたアントラセン,ピレンなどの有機芳香族分子を,近紫外領域のレーザーによりパルス光励起した場合に見られるこのようにして放出される光吸収種の集団は高い並進運動エネルギーを持ち,対置された別の高分子表面を過渡的に加熱し内部に数十nm程度しみ込む.さらにパルス照射を繰り返すと,極表面層の光吸収種は再び周囲を過度的に加熱し,内部へ拡散する.このようにレーザー照射により物質表面は見掛け上,平滑のままで大きな形状変化は起こらないにもかかわらず,分子などが固体内に注入される現象をレーザー注入(laser implantation)と呼んでいる.この技術を用いると,さまぎまの機能性分子を空間選択的に高分子表面に植え付けることが可能となる.