レーザーによる気体の絶縁破壊(gas break down by lasers)とは

高出力レーザーを気体中に集光すると,集光点でのレーザー強度(電界)が非常に高くなり強い発光と音を伴いプラズマが発生する.これは電気放電による気体の絶縁破壊のアナロジーよりレーザーによる気体の絶縁破壊と呼ばれている.気体が絶縁破壊を起こすレーザー強度(W/cm2)はレーザー波長(光子エネルギー),気体分子(原子)の種類,圧力に依存する.絶縁破壊に必裂なレーザー強度は,1気圧の空気の場合,波長10 μmのCO2レーザーでは,~109 W/cm2である.レーザー波長が短くなるとともに増大し,0.6 μm前後で極大値を持ち,これより短波長になると減少する.よく知られたマイクロ波放電では気体中に偶然に存在する,~10個/cm3の遇存電子が種となって絶縁破壊に至る.しかし,レーザーの焦光点の大きさ0.13 mm3にはほとんど遇存電子は存在しないため,初期電子は多数の光子が同時に吸収される多光子吸収過程で供給される.波長が数μm以下の領域では量子論的取扱いが必要であるが,光子エネルギーが電離エネルギーより小さい波長領域では電子増倍から絶縁破壊に至る過程はマイクロ波による絶縁破壊と同じ高周波放数機構で説明できる.高周波放電機構の量子論的取級いは逆制動放射機構と呼ばれている.最近進歩の著しいフェムト秒パルスの超高輝度レーザーを用いると原子にかかる電界強度が電離ポテンシャルよりも大きくなり直接電離が起こる.→レーザープラズマ