近接場(ニアフィールド)光学(near field optics):光近接場(optical near field)とは

光近接場とは3次元形状を持つ物体に光を照射したとき,物体表面で散乱される光とともに同時に発生し,物体表面にしみ出して局在する非伝搬光である物体表面が平面である場合,その表面にしみ出す光近接場はエバネッセント光と呼ばれ,光学の教科書に掲載されている.エバネッセント光の染み出しの厚みは光線の波長程度であるが,これは3次元形状の物体表面の光近接場の特別な場合である.通常の物体は,3次元形状を持ち,特に最近はその物体の寸法が光源の波長以下の場合をよく扱うが,その場合の染み出しの厚みは物体の寸法程度であり,したがって光源の波長以下の厚みを持つことがわかっている.このような光近接場には回折限界がないため,入射光の波長の回折限界を大きく超えた解像度を得ることが可能で,微細構造の観察や加工また大容最光メモリなどへ応用することが考えられている.具体的には物質表面に吸着した微量な分子膜や微粒子を高感度に検出するセンサ・分析法としての応用や,微小開口や微小散乱体をプローブとして用いた超高解像顕微鏡などの応用が知られる.このような顕微鏡は,光近接場走査光学顕微鏡(near field scanning optial microscope:NSOM)と呼ばれ,波長を越えてナノメトリックな空間分解能を持つ光学顕微鏡として,あるいは,AFMやSTMなどの走査プローブ顕微鏡(SPM)の光学版として,最近注目されている.→近接場(ニアフィールド)光学顕微鏡