フーリエ変換赤外分光法(Fourier transform infrared spectroscopy:FT-IR)とは

分子が結晶を形成すると,格子点を中心とした分子の格子振動)が生じる.これには並進的および回転的格子振動が存在し,一部は音響的に測定されるが,そのほかは赤外から遠赤外領域の振動数を持ち仮動単位を形成する分子内および格子振動の振動数は,関与する粒子の質量,力の定数(振動のばねの強さ)のほか,粒子の空間的配置によって決まる.赤外吸収は,通常振動準位間の遷移によって生じる.したがって分子の赤外吸収スペクトルは主としてその分子の固有振動に基づくもので,これを測定すれば分子あるいは結晶の同定などの定性分析が可能となる.また赤外吸収にはLambert-Beelの法則が成立するので,定量分析もおこなえる.フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)は,試料からの赤外領域の光を光干渉計に入れ,出てくる光の強度を可動鏡の移動距離の関数として測定し,そのフーリエ変換によってスペクトルを得るものであるFT-IRは原理上,つねにすべてに波長の光を活用でき,高感度,高分解能に用いられる.