光熱分光法(photothermal spectroscopy)とは

一般に分子が光励起されるとほぼ必ず物体の温度が上昇する.この発熱をとらえることで,その系のさまざまな性質を知ることを目的とした分光法が光熱分光法である.温度上昇を直接検出する方法,熱膨張による音波としてとらえる方法,屈折率変化として測定する方法,黒体輻射を検出する方法などがある.この手法は非常に高感度であること,光の透過しない試料でも吸収などが測定できること,スペクトルは種々の緩和過程の速度に依存することなどの特色を持ち,レーザーなどの光源の進歩とともに,高感度微量分析や非破壊分析,診断,物理化学的な緩和過程の研究,光化学反応の研究などに急速に用いられるようになってきた.一方,最近では強力なレーザー光を用いたとき発生する熱や音波のために光学系がダメージを受けることがしばしばあり,こうした問題を克服するための検出手段としても応用される.