バンド充填効果(band-filling effect)とは

GaAsなどの半導体中に光励起により電子-正孔対もしくはプラズマを生成すると,その密度により同半導体の吸収端近傍の光吸収スペクトルが変化する.また吸収スペクトルと屈折率スペクトルの間にはクラマース・クローニッヒの関係があるため,屈折率スペクトルも変化する.これには種々の原因があるが,その一つとして上記のように電子・正孔プラズマが生成されると,パウリの排他律によりバンド間遷移確率が減少することがある.これがバンド充填効果である.これらの吸収率変化や屈折率変化は非線形光学効果の一種であり,光スイッチなどに応用される.上記の吸収率変化および屈折率変化の原因は,材料や光の波長により異なる.極低温のGaAsの吸収端近傍では,励起子吸収の飽和が主要な原因である.ところが室温では,励起子効果がLOフォノン散乱により弱められ,特に高励起下ではバンド充填効果や連続準位のクーロン増強のスクリニングが主要なメカニズムとなる.特にバンド端より低エネルギー側である透明波長ではバンド充填効果が大きい.→光導電スイッチ