8・2・1 2次非線形光学効果を用いた波長変換

2次の非線形光学効果による光第二高調波発生(second-harmonic generation:SHG),和周波発生(sumfrequencygeneration:SFG),差周波発生(differencefrequency generation:DFG),光パラメトリック発生(optical parametric generation:OPG)・:増幅(opticalparametric amplification:OPA)・発振(opticalparametricoscillation:OPO)は,レーザー光の波長変換の手段として,きわめて重要な役割を果たしている.固体の吸収が問題となる深紫外領域を除いて,実用的な波長変換素子はすべて結晶材料を非線形媒質として用いている.3次以上の高調波の発生にも,第二高調波発生と和周波発生とが組み合わされて利用されている.3次以上の非線形光学効果を用いるよりも2次非線形光学過程を複数回組み合わせて用いるほうが効率が高いからである.

(1) 第二高調波発生(SHG)

SHGは最もポピュラーな波長変換法である.

変換効率がそれほど高くなし基本波の減衰が無視できる範囲内では,第二高調波の強度は次の式で与えられる.

式8・17

ここで,IωとIは基本波と第二高調波の強度,Lはデバイス長,λは基本波の波長,derrは(後述)実効非線形光学定数,nω,nはそれぞれ基本波と第二高調波に対する非線形媒質の屈折率,Δk=k-2kωは基本波と第二高調波の間の波数不整合量である.Δk=0,すなわち,位相整合が達成されていれば,第二高調波強度はテバイス長Lの2乗に比例して増大し,適切な条件下では実用上十分な変換効率が得られることになる.位相整合を達成するためには,k=2kω,すなわちn=nωとしなければならず,これを達成するために以下にあげるようないくつかの方法が用いられている.

位相繋合を達成するためには,基本波波長,結晶の角度や温度,非線形光学定数の反転の周期などを所望の値に設定する必要がある.これらのパラメータの設計値からのずれの許容幅は,動作の安定性やデバイス作製プロセスなどの観点から,きわめて重要なデバイス特性の一つである.変換効率が理想的な位相盤合時の半分に下がるとき,すなわちsin2(ΔkL/2)/(ΔkL/2)2=0.5となるΔk(=2.78/L)に対応するずれの許容値を,その材料・テバイスの位相整合許容幅という.

SI-IGにおけるパワー変換効率は,

式8・18

で与えられる.ここで,pω,Pはそれぞれ,基本波と第二高調波のパワー,Aは基本波のビーム断面積である.変換効率を高めるためには,1)位相整合を達成する,2)deff2/n3が(性能指数(figure of merit)と呼ばれる)の大きな非線形光学材料を用いる,3)基本披ビームを集光することによって基本波パワー密度(Pω/A)を高くし,4)長い相互作用長(L)を維保することが必要であることがわかる.

位相整合条件下で変換効率が高くなると,第二高調波へのパワー移行による基本波の減衰の影響を無視できなくなり,

式8・19

となる.ここで,

式8・20

は十分な変換効率が得られるために必要な相互作用長で,L=LLNでは58%の変換効率が得られる.

図8・2にSHG変換効率の相互作用長依存性2)を示す.高効率変換では基本波強度の減衰に伴い変換効率の上昇が鈍るとともに,チューニングカーブが低効率域のsinc関数の形状から大きくひずみ,位相整合許容幅が急激に減少することに注意が必要である.

図8・2

(2) 和周波発生(SFG)

SFG(ωl2→ω3)の出力和周波光強度は,変換効率が低くて入射光の減衰が無視できるならば,

式8・21

で与えられる.ここで,波数不整合はΔk=k3-k1-k2である.入射光の減衰が無視できない領域では,出力光強度はヤコビ(Jacobi)の楕円関数を用いて表すことができる3).ここでは,位相整合条件下で片方の入力光が強い場合の極限での解を示す.振動数ω2の入射光の光子数が十分多く(Iω1(0)/ωl<<Iω2(0)/ω2),その減衰を無視できる場合には,非線形相互作用長

式8・22

を用いて,

式8・23

となり,相互作用長の増加に対して振動的なふるまいを示すことになる.

SFGはSHGとともにレーザー光の短波長側への波長変換に広く用いられている.一例として,波長1.547μmのDFBレーザー光の第八高調波発生によって波長0.193 μmの深紫外光を発生させた実験系を図8・3に示す.エルビウムドープ光ファイバ増幅訴で増幅した3.1Wの基本波から,5段階のSHG,SFGを経て140 mWもの第八高調波が得られている4)

図8・3

(3) 差周波発生(DFG)DFG(ωps→ωi)の出力差周波光強度は,変換効率が低くて入射光の減衰が無視できるならば,

式8・24

で与えられる.ここで,Δk=ki+ks+kpである.入射光の減哀が無視できない場合には,出力光強度は,SFGと同様,ヤコビの楕円関数を用いて表すことができる3).振動数ωpのポンプ光の強度が十分に強く8-式ページ5,位相整合時にもその減衰が無視できるとすると,非線形相互作用長

式8・25

を用いて

式8・26

となる.差周波発生の場合は和周波発生や第二高調波発生と本質的に異なるふるまいが現れる.発生した差周波光(振動数ωi)だけでなく入力光(振動数ωs)もωp→ωisの過程を介して増幅を受けて成長していく.

DFGは,以下のパラメトリック過程とともに,長波長側へのレーザー光の波長変換,特に既存のレーザーでは実現しにくかった中間赤外域やTHz領域のコヒーレント光を得る手段として有用である.一例として,Nd:YAGレーザーでポンプした2台のPPLN OPO出力光を用い,AgGaS2結晶での温度チューニングDFGによって5~12 μmの発生に成功した例5)を図8・4に示す.

図8・4

(4) 光パラメトリック効果

非線形媒質に振動数ωpの強いポンプ光と振動数ωs(<ωp)のシグナル光とを入射すると,DFGの過程を介してシグナル光が増幅されると同時に振動数ωipsのアイドラ光が発生して増幅されていく.この過程を光パラメトリック増幅(OPA)という.位相整合条件下では,シグナル光強度は,

式8・27

と増幅される.ここでgは

式8・28

で与えられる利得係数である.シグナル光を外部から入射せず,ポンプ光以外の光の入射がない場合でもシグナル光とアイドラ光が発生する.これは,真空場の零点振動を入力としたパラメトリック増幅過程であると解釈できる.これをパラメトリック蛍光6)と呼ぶ.パラメトリック増幅過程を経て増幅されたパラメトリック蛍光を取り出して利用するのが,パラメトリック発生(OPG)である.

パラメトリック蛍光はパラメトリック過程による自然放出現象に相当し,OPGは増幅自然放出光(ASE)に相当する.これに正のフィードバックをかけることによって発振を起こしてコヒーレント光を取り出すことができる.これが光パラメトリック発振(OPO)7)である.パラメトリック発振は,通常は非線形媒質を共振器中に置くことで実現される.シグナル光とアイドラ光の両方に対して共振器を構成するDRO(doubly resonant oscillator)とシグナル光に対してのみ共振器とするSRO(singly resonant oscillator)がある.

以下では,定常状態(CW動作時)のしきい値と変換効率についてまとめる.

定在波型のDROでは,発振のしきい利得は,

式8・29

で決定される.ここでRs,iはシグナル(アイドラ)光に対する共振器ミラーの反射率,αs,iはフレネル損や散乱損失・吸収損失を含めた減衰係数である.共振器のQ値が十分に高い場合8-式ページ6(i)には,

式8・30

となる.DR-OPOの変換効率は,

式8・31

で与えられる.Pp,thはしきいポンプパワーであるPp(0)=4Pp,thで最大50%の変換効率が得られる(リング共振恭構造をとれば100%の変換効率を得ることができる).DROは比較的低いしきい値で発振可能だが,共振器長などのわずかな変化に対して発振モードが大きく跳んて動作が不安定になるので,安定化のために工夫が必要となる.

一方,SROでの発振しきい利得は,共振器のQ値が高い場合には,

式8・32

で与えられる.また,変換効率は,

式8・33

となる(Γは8-式ページ6(ii)を満たす).SROの発振しきいポンプノパーはDROの場合の2/[1-Riexp(-αiL)]倍高くなるが,特別な工夫なしに安定動作を実現することができる.

OPG・OPOで得られるシグナル光とアイドラ光の波長は非線形媒質の位相整合条件によって決定される.結晶の角度や温度を変えることで発生光の波長をチューニンクすることができるので,OPG・OPOは波長可変光源としてきわめて有用である.

図8・5に,波長2.93μmのエルビウムレーザーをポンプ光源として用いたZGPのOPOの角度チューニングカーブ8)を示す.3.8~12.4 μmの中間赤外領域を連続的にカバーできるコヒーレント光源として,さまざまな分野での利用が期待できる.

図8・5

8・2・2 バルク結晶における位相整合と波長変換

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