背負って使える!バックパック型lidar(レーザーレーダー)

GreenValley International社:紹介ページ

車の自動運転に各社が鎬を削る昨今、ライダー(Light Detection And Ranging、Laser Imaging Detection And Ranging)いう言葉は随分と耳慣れたものになってきた。と言っても、この比較的新しい技術は自動車に関する物だけではなく、あらゆる分野で多岐に渡って利用されている。

例えば、地質学や地震学では航空機搭載型ライダーとGPS(全地球測位システム)を組み合わせ、断層や隆起・沈降に伴う地殻の変動を調査に使用され、樹木を伐採することなく計測が可能ということもあり、非常に重宝されている。また、大気物理学や宇宙工学の分野においても、月面に設置された鏡を使ったレーザー測距実験に於いて月と地球の距離を観測する際にも使われており、宇宙に於いては、1994年のSTS-64にライダーが搭載され、雲やエアロゾルを観測している。日本初の「月周回衛星かぐや」にライダーの一種であるレーザー高度計が積みこまれ月前面の正確な地形高度データの取得に成功している。更には海洋学でも植物プランクトンの蛍光や海洋表層の総合的なバイオマスの測定に用いられている。このように様々な分野で活躍の場を与えられているライダーだが、最近また新たな形態での使用が注目を集めている。
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写真の人物が背負っているのはバックパック型のライダーである。総重量は6キログラム程で、持ち運べるサイズとなっている。

開発したGreenValley社によると、フィールドワークやBIM、森林資源調査、交通施設モニタリング、トンネル測量、内装装飾、遺産保護と考古学等幅広い分野での使用を目的としており、GPS(全地球測位システム)とIMU(間性計測装置)を使用せずに高い精度でのマッピングを可能にしている。

通常、マッピングシステムの構成はGPS(全地球測位システム)とIMU(間性計測装置)を使用することが一般的だが、その場合、GPS信号が届かない場所では当然使用することが出来ない。つまり、屋内やトンネル、鬱蒼と茂った木々の下或いは洞窟等などでは用を成さない。その為、このような場所ではSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)が使用されることになる。これは、自己位置推定と環境地図の作成を同時進行で行うもので、身近なところではロボット掃除機等に利用され始めている技術である。最近では国際的な研究の対象となっており、AIや車の自動運転、3Dマッピング等、様々な分野での活用が期待されている。この商品「LiBackpack」は、レーザー測量とSLAMを組み合わせた屋内外統合のライダーシステムを搭載し、GPSを使用することなくリアルタイムでセンチメートル単位の高精度点群データの取得を可能にしている。それだけでなく、移動中に自動的にデータの「縫い合わせ」を行ってくれる為、面倒なデッドアングルの再スキャンの必要がなく、余計な手間が掛らず時間の節約にもなる。また、軽量設計となっている為、ハンドヘルドでの使用にもバックパックマウントでの使用にも適している優れものでもある。更には、GPS(全地球測位システム)とIMU(間性計測装置)を使用しないことでシステム全体の大幅なコストダウンに成功している、ということも重要なポイントとなっている。

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 図3

LIBACKPACK SCANNER SPECIFICATIONS (VELODYNE VLP-16/ VELODYNE HDL-32E)

Feature Parameter
Measurement range 100m
Wavelength 903nm
Scanner rate 300000pts/s
Horizontal field of view 360°
Vertical field of view ±15°
Laser safety level Class 1 laser
Weight 830g
Point cloud formats las, ply

バックパック型ライダーは長い期間研究は成されてきたが、それは軍事用や研究用といったもので、一般的な商用マッピングバックパックの市場はまだまだ小規模且つ限定的だ。しかしその実用性は、鉱山に掘られた坑道や、車でのアクセスが困難な場所、建物内、GPSの使用出来ないエリアのマッピング、更には、大規模災害時の被害状況の迅速な把握とその情報の共有にも大いに活用が期待できる。また、視点を少し変えれば、施設管理の為に2人で一日かけて行っていたレーザースキャンを、1人で一時間で終えることが出来る、というような可能性も示唆されている。つまり、大幅な作業効率の向上と人件費の削減に繋がると見られている。まだ市場が小規模なだけに未知数であり、この先が楽しみな技術であることは間違いない。

参考
ライダーとは

*SPAR 3D
http://www.spar3d.com/blogs/measuring-the-value/vol14no5-what-is-the-mapping-backpack/
http://www.spar3d.com/blogs/measuring-the-value/vol14no6-mapping-backpacks-what-you-need-to-know/

*https://i0.wp.com/greenvalleyintl.com/(図1−3)

「執筆者:株式会社光響 緒方」