JR東海、レーザースキャナで橋梁の安全点検

河川に掛けられた橋梁の橋脚部分周辺には「根固めブロック」が設置されている。台風や大雨による河川の増水の際に地盤が削られ、橋脚が傾くことを防止する為だ。しかし、これは一度設置すれば万全というものではなく、増水すればブロックが沈下していないか、流されていないか等確認を必要とするもので、安全確保の為には、少なくない費用と労働力、時間を割かなければならなかった。
この件に関しJR東海は平成29年5月、ブロックの位置を3Dレーザースキャナで検測する位置計測装置を開発し、今年9月から東海道新幹線富士川橋りょうに導入することを発表した。
開発された位置計測装置は、橋桁から水面に向かって3Dレーザースキャナを投射するもので、ヘリコプターと職員による目視では250個程度の計測であったものが、4万個設置されている根固めブロックの全て計測することが可能だ。

 図1
 図2
*計測装置の構成

 図3
*計測イメージ

 図4
*従来の方法との計測範囲の違い

スキャナを計測治具に取付け橋梁の点検用通路に設置し、レーザーを照射。根固めブロックの位置を取得し、次の橋脚の間へ移動する。これを繰り返すだけで約4万個余りのブロックの計測をたった1日で終えることが可能になる。
この他にも、ヘリコプターを使用する必要が無い為、調整や準備時間を要することなく、水位低下後速やかに計測を行える。計測から1週間あまりかかっていた計測結果出力は1日に短縮され、±10cmあった計測誤差も±2mmと従来の1/50程度に向上している。効率性に関しても、ヘリコプターの運航費用含め1回の計測に300万円程かかっていた費用が初期投資のみに抑えられ、また、データ解析に関しても専門技術者が行っていたのに対し、専用ソフトがある為誰にでも行えるようになる。更に、河川に入っての作業等を行う必要が無くなる為、安全性の面でも非常に向上している。

 図5
*計測した点群データイメージ

 図6
*専用ソフトによる分析画像

JR東海によると、このような計測に3Dレーザースキャンを用いるのは国内で初となり、国際航業、JR東海コンサルタンツと共同で特許を出願しているとのこと。
運用は平成29年9月に開始される。富士川橋梁だけでなく河川にかかる大型橋梁の根固めブロック計測に、全国的に用いられるようになるのもそう遠い話ではないのかもしれない。

参考
*マイナビニュース
http://news.mynavi.jp/news/2017/05/25/333/

*東海道旅客鉄道㈱
http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034018.pdf

*http://blog-imgs-75.fc2.com/n/e/t/netnaka/201506142148487fc.jpg(図1)

*建設ITワールド
http://ieiri-lab.jp/it/2017/05/3d-scan-fujigawa-bridge.html(図2−6)

「執筆者:株式会社光響 緒方」